romantic_pochaのブログ

気が向いた時に書いてる日記です!

ほぼ関係ない話です

私には信州人の血が流れている(高速道路の逆走車両より唐突)。

信州と言えば、蕎麦が有名である。
県内には多くの蕎麦屋があり、冬でも基本的には冷たいザルそばを食べている印象だ。
東京のスーパーでも「信州そば」と書かれた商品が置いてあると、なんだか懐かしくなるものだ。

しかし、私は蕎麦が好きではない。

アレルギーなどのどうしても食べられない理由があるわけではなく、ただ好きではない。

今日の夕飯は蕎麦だよ!と言われると、前日のカピカピ保温ご飯を卵かけご飯にして蕎麦を回避した。蕎麦屋に行くと、メニュー表の端っこに申し訳程度に書いてあるうどんを頼んだ。
年越しそばも1人だけ年越しうどんにしてもらっていたので、毎年のように年を越す直前まで祖母に文句を言われたものだ。今更ながら申し訳なかった。

などと、蕎麦にまつわる思い出は深いようでちょっと浅い。というか別に、蕎麦の話をしたいわけではない。


先日、知り合いに連れられて、うどん屋さんに行った。

知り合いが「店の見た目は汚ったないんだけど、味は美味いんだよなぁ🤔」と言う通り、失礼ながら、外観からしておよそ綺麗でオシャレな店舗とは程遠かった。

店内に入ると、物腰柔らかそうな老齢の店主が一人。厨房を囲んでカウンター席が10席程度。日焼けして黄色くなった古いエアコン。色んな人が座ったためか、擦れて黒くなった椅子とクッション。出汁の匂いがまたもやダイエット中の私の胃袋を握りつぶさんとする。

座った席の隣には雑誌が並んでおり、そのどれもが黒ずんでいた。煤や油だろうか?少し埃を被っているので、その点においても「綺麗ではない店」である。
たまたま手に取った雑誌は 昭和こども新聞 みたいな名前だったと思う。セピア色の写真が載っていたり、その当時の子どもたちの間で流行っていたであろう事象について書かれている雑誌であった。15年ほど前の書籍だ。

私はかき揚げうどんを頼んだ。1杯650円と、個人経営の店としては普通か少し安いくらいの価格である。大盛りもプラス100円程度でできるとのことで、知り合いが「大盛りにしないと足りないんじゃないの(笑)」と言ってきたが、ダイエット中なので思いとどまった(今思えばアイツ失礼だな)。

と、ここまでは店の印象としてあまり好感が持てなかった。
だが私はミシュランの審査員でもなければ店の批評をする有名ブロガーでもない。とりあえず美味いもんが食えりゃあいい。下水の横やトイレの中で食事をするような状況でなければ、別にその辺はこだわるつもりは、今のところはない。

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鮮やかな小松菜の色が眩しい。
天かすの下に隠れた、小さめのかき揚げ。
提供されたうどんは、本当に手打ちだと言わんばかりの不揃いな麺であった。
うどんにしては太かったり、恐らく生地の端の方であろうものは、もはや すいとん である。言えば平たく太い麺にしてくれる…らしい。

ズズッ、と1本啜ってみる。
うーん、少し硬めで噛みごたえのある平たい麺だ。丸亀製麺はなまるうどんのような、柔らかく細い麺ではない。ちょっと新鮮な気持ちになった。
薬味の生姜も少量ながらよく効いている。チューブの生姜には敵わない風味が爽やかに広がっていく。
かき揚げは汁を吸って柔らかくなっていた。箸を通すとホロホロッと崩れた。個人的にはサクサクのかき揚げが好きなのだが、美味しい出汁をジュジュッと吸いながら頬張るかき揚げもたまには良い。
天かすがこれまたほどよく美味いのである。歳が歳なので、最近は油ものを食べるとすぐに胃もたれをするようになっているのだが、しつこくなくていくらでも食べられそうだ。

それにしても何だろう、このどこか懐かしい感じは。
チェーン店の安定して美味しいうどんも好きだが、この不揃いで硬めのうどんも良い。
中学時代、夏休みの家庭科で各々一食作ってレシピや感想をレポートにまとめて提出する課題があったのだが、そこで私が作ったうどんと似ているような硬さ…とも少し違うか。

しばらく啜っていると、ふんわりと何かが香ってきた。
その瞬間、懐かしさの正体を察知した。

「ばあちゃんちだ!!!!!!!!!」

そう、祖母の家なのである。

古めかしい感じも、埃の被りかたや油で汚れた感じも、不揃いだけど食べ応えがあって美味しいうどんも、全部祖母宅で染み込んだ感覚なのだ。ふんわり香ってきた何かは、紛れもなくばあちゃん家の匂いだった。

学生時代、部活帰りの背中を夕日に向けて帰宅した夏の終わり、ただいま~!アイスある!?と言いながら飛び込んだ玄関。
もうご飯出来てるんだからアイスは後になさい!と言われ、渋々食卓につこうとしてふと目をやった先の仏壇に、スイカが切ってあった時の期待感。
エアコンの冷風が直に当たる特等席。

あの日のばあちゃん家の匂いだ!!!

しかもこのうどん、ばあちゃんがよく作ってくれたそば粉入りのすいとんに似ていないこともない。1度懐かしさを覚えたうどんに、どんどん愛着が湧いてくる。
ふとエアコンの下に目をやると、「当店のうどんにはそば粉を使用しております」と手書きで書いた紙が貼り付けてあるではないか。なるほど、私の味覚も捨てたもんじゃあない。

祖母宅のような雰囲気の店内で食べる、祖母の味にちょっぴり似ているうどん。
一杯でも十分に満足できる。大盛りにしたらきっと食べきれなかっただろう。

生姜とゴマが沈んだ汁をズズッと飲み干す。
ガァ~ッ!と風呂上がりにビールを飲んだ品のない親父のような一声を出すと、膨れた腹を撫でる。胃袋がボコッと出ているような気がする。ああ、またダイエットやり直しか。

店を出てからも、あの祖母宅のような香りが忘れられなかった。

たまにおばあちゃん家に行くように、半年に1回くらいの頻度で通いたいかもしれない。

うーーーん、店の名前忘れた。